大判例

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高松高等裁判所 昭和62年(ネ)11号 判決

控訴人・附帯被控訴人(以下「被訴人」という。)

日本国有鉄道清算事業団

右代表者理事長

杉浦喬也

右訴訟代理人弁護士

鵜澤秀行

河村正和

右訴訟代理人

室伏仁

鈴木寛

小泉英夫

西村一嘉

被控訴人・附帯控訴人(以下「被控訴人」という。)

松尾幸弘

右訴訟代理人弁護士

小林勤武

三野秀富

主文

一  控訴人の本件控訴を棄却する。

二  被控訴人の本件附帯控訴に基づき原判決主文第二項を次のとおり変更する。

1  控訴人は被控訴人に対し、別紙賃金一覧表記載の番号1ないし4の各期間については毎月二〇日限り同一覧表の賃金額欄記載の各金員及び右各金員に対する当該月二一日から支払ずみまで年五分の割合による金員をそれぞれ支払え。

2  控訴人は被控訴人に対し、昭和六二年四月以降毎月二〇日限り金二四万三七〇〇円及び右各金員に対する当該月二一日から支払ずみまで年五分の割合による金員をそれぞれ支払え。

3  控訴人は被控訴人に対し、別紙期末手当一覧表(B)記載の番号1ないし15の期末手当額欄記載の各金員及び右各金員に対する同一覧表の支払日欄記載の各支払日の翌日から支払ずみまで年五分の割合による金員をそれぞれ支払え。

4  被控訴人のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は第一、二審とも控訴人の負担とする。

四  右二1ないし3は仮に執行することができる。

事実

一  当事者の求めた裁判

1  控訴の趣旨

(一)  原判決を取り消す。

(二)  被控訴人の各請求を棄却する。

(三)  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

2  控訴の趣旨に対する答弁

(一)  主文第一項同旨。

(二)  控訴費用は控訴人の負担とする。

3  附帯控訴(請求の拡張)の趣旨

(一)  原判決主文第二項を次のとおり変更する。

(1) 控訴人は被控訴人に対し、別紙賃金一覧表記載の番号1ないし4の各期間については毎月二〇日限り同一覧表の賃金額欄記載の各金員及び右各金員に対する当該月二一日から支払ずみまで年五分の割合による金員をそれぞれ支払え。

(2) 控訴人は被控訴人に対し、昭和六二年四月以降毎月二〇日限り金二四万三七〇〇円及び右各金員に対する当該月二一日から支払ずみまで年五分の割合による金員をそれぞれ支払え。

(3) 控訴人は被控訴人に対し、別紙期末手当一覧表(A)記載の番号1ないし15の期末手当額欄記載の各金員及び右各金員に対する同一覧表の支払日欄記載の各支払日の翌日から支払ずみまで年五分の割合による金員をそれぞれ支払え。

(二)  訴訟費用は第一、二審とも控訴人の負担とする。

賃金一覧表

〈省略〉

(三)  右(一)(1)ないし(3)につき仮執行の宣言。

4  附帯控訴の趣旨に対する答弁

(一)  本件附帯控訴を棄却する。

(二)  附帯控訴費用は被控訴人の負担とする。

二  当事者の主張

1  被控訴人の請求原因

(一)  当事者

(1) 控訴人は日本国有鉄道法に基づいて設立された公共企業体で、「日本国有鉄道」と称したが、日本国有鉄道改革法及び日本国有鉄道清算事業団法により昭和六二年四月一日事業団に移行し、名称を「日本国有鉄道清算事業団」と変更した。

(2) 被控訴人は昭和四〇年七月一日控訴人の日本国有鉄道当時の職員として採用され、昭和五八年五月当時には四国総局松山電気区松山電気支区に電気検査長(以下、組織名・職名等はすべて日本国有鉄道当時のものをいう。)として勤務していた。

また、被控訴人は国鉄労働組合(以下「国労」という。)に所属し、昭和四一年七月国労愛媛支部青年部書記長に選出されたのを初めとして、国労四国地方本部青年部副部長(昭和四六年)、国労松山電気区分会執行委員(昭和四八年)、同分会書記長(昭和四九年)、国労愛媛支部執行委員(昭和五二年)等を経て、昭和五五年一一月からは同支部書記長の職にあった。

(二)  免職の意思表示

(1) 控訴人は被控訴人に対し、昭和五八年五月三〇日付で後記の事由をもって日本国有鉄道法三一条により懲戒免職処分にするとの事前通知をなし、同年八月三日被控訴人の異議申立を退けて右事前通知のとおり発令した(以下、この懲戒免職処分を「本件処分」という。)

「 昭和五八年五月四日松山電気支区検査班詰所において八時四五分ころ、支区長に対して暴力行為等を行い傷害を負わせたことは、職員として著しく不都合な行為である。」

(2) しかし、本件処分は無効である。

(三)  賃金等

(1) 被控訴人は本件処分当時控訴人から一か月平均二〇万六六〇〇円の賃金を毎月二〇日に受領していた。

(2) その後、控訴人において昭和五八年度から昭和六二年度まで職員の基本給についての定期昇給及びベースアップが実施され、扶養手当及び通勤手当も増額された。

そして、控訴人が実施した右期間の定期昇給、ベースアップ、扶養手当、通勤手当の増額率等を被控訴人に適用すると、被控訴人の右期間の賃金等は別紙賃金等増額一覧表記載のとおりである。

期末手当一覧表(A)

〈省略〉

期末手当一覧表(B)

〈省略〉

(3) また、控訴人の職員は控訴人から期末手当として、毎年六月又は七月に夏期手当、毎年一二月に年末手当、毎年四月に年度末手当の支給を受けていた(ただし、昭和六一年度の年度末手当は昭和六二年三月三一日に支給された。)。

そして、控訴人がその職員に支給した昭和五八年年末手当から昭和六三年夏期手当までの各期末手当をそれぞれの支給率に従って被控訴人に適用すると、被控訴人の右各期末手当は別紙期末手当計算式一覧表のとおりであり、右各期末手当の支払日は別紙期末手当一覧表(A)の支払日欄に記載のとおりである。

(4) 本件処分が無効である以上、被控訴人には本件処分の日の翌日である昭和五八年八月四日以降も給与支給日と定められている毎月二〇日限り右賃金を、各期末手当の支払日に各期末手当をそれぞれ受領する権利がある。

(四)  よって、被控訴人は、

(1) 被控訴人が控訴人に対し雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認

(2) 控訴人に対し次の金員の各支払(当審請求拡張)

(ア) 別紙賃金一覧表記載の番号1ないし4の各期間については毎月二〇日限り同一覧表の賃金額欄記載の各賃金及びこれに対する各支払日の翌日である当該月二一日から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金

(イ) 昭和六二年四月以降毎月二〇日限り一か月当たり二四万三七〇〇円の各賃金及びこれに対する各支払日の翌日である当該月二一日から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金

(ウ) 別紙期末手当一覧表(A)記載の番号1ないし15の期末手当額欄記載の各期末手当及びこれに対する同一覧表の支払日欄記載の各支払日の翌日から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金

をそれぞれ求める。

2  請求原因に対する控訴人の認否

(一)  請求原因(一)の事実はいずれも認める。

(二)  同(二)について

(1) 同(1)の事実は認める。

(2) 同(2)は争う。

(三)  同(三)について

(1) 同(1)の事実は認める。

(2) 同(2)のうち、被控訴人が本件処分当時支給されていた基本給を基礎にしてその後の定期昇給(昇給が減ぜられる事由がない場合)、ベースアップ、扶養手当、通勤手当の増額分を被控訴人にそのまま適用した場合、その額が別紙賃金等増額一覧表記載のとおりであることは認めるが、その余は争う。昇給については昇給欠格条項に該当する場合一定の号俸が減ぜられる。

(3) 同(3)のうち、昭和五八年度年末手当から昭和六三年度夏期手当までに控訴人がその職員に支払った各期末手当の支給率をそのまま被控訴人に適用した場合、その額が別紙期末手当計算式一覧表に記載のとおりであり、各期末手当の支払日が別紙期末手当一覧表(A)の支払日欄記載のとおりであることは認めるが、その余は争う。期末手当については昭和六一年度夏期手当から労使間において協定を締結し、日常の勤務成績に応じて五パーセント増減できることとしたので、被控訴人がその支給率そのままの額の支給を受けられることにはならない。

(4) 同(4)は争う。

3  控訴人の抗弁並びにこれに対する被控訴人の認否及び主張は、次に当事者双方の当審主張を付加するほかは、原判決事実摘示中の右関係部分(原判決四枚目裏五行目から同一一枚目表二行目まで)と同じ(ただし、同七枚目裏三行目の「何ら違法な点はない。」を「何ら違法な点はなく、無効とすべき事由もない。」と改める。)であるから、これを引用する。

(一)  控訴人

(1) 控訴人の職員の非違行為が懲戒処分に値するか否か、また、懲戒処分のうちいずれの処分を選択するかを決定するには、当該行為の目的、態様、程度、影響等のほか、行為者本人の性格、平素の行状、当該行為の他の職員に与える影響、本人及び他の職員の訓戒的効果等諸般の要素を斟酌する必要があり、これらの点についての判断は控訴人の最高責任者である総裁の自由裁量に委ねられている。したがって、懲戒処分が懲戒権の濫用として違法となるのは、当該行為と対比して社会観念上著しく妥当性を欠き、裁量権を付与した目的を逸脱し、これを濫用したと認められる場合に限定すべきである。

そして、右裁量権行使の当否を判断するには、処分当時の社会情勢をも含めて考慮すべきであり、後述の諸事情を勘案すれば、控訴人の企業秩序維持確保という見地から考えて、本件処分はいまだ合理性を欠くものとは断定できないことが明らかである。

控訴人は当時巨額の累積債務を抱え、経営改善を図り国民の負託に応えるため要員削減、地方線の整理、設備投資の見直し、増収節約活動等を実施していたが、これらの施策を実現するために職場の秩序や規律を保つことが必要であったところ、かえって劣悪な状態にあるとの批判を受け、そうしたなかで昭和五七年三月運輸大臣から控訴人の総裁に対し、職場規律の確立が重要であり、実態調査に基づき厳正な措置を講じる必要がある旨の指示がなされ、同年七月に出された第三次臨時行政調査会基本答申において、控訴人の緊急に取るべき措置として職場規律の確立を図るため職場におけるやみ協定及び悪慣行を全面的に是正し、違法行為に対する厳正な処分等の人事管理の強化を図るべきことが提言され、同年九月の閣議でも控訴人の緊急に講ずべき対策として第一に職場規律の確立等が掲げられ、職場におけるやみ協定及び悪慣行について総点検等により実態を把握し、是正措置を講じること、職員の信賞必罰体制を確立し、人事管理の一層の強化を図ることなどが指示され、また、控訴人の経営は非常事態に立ち至っているとして、全職員が現況を強く認識して再建にまい進すべきである旨の政府声明が発せられた。

控訴人も昭和五七年三月全職場を対象に総点検を実施し、職場規律の乱れが憂慮すべき状態にあることを知ったので、以後引き続き総点検を行うとともに、職場規律の確立が喫緊の課題であるとして、本社、総局、管理局、現場が一体となって全力を挙げてこれに取り組んだ。

控訴人の四国総局でも、昭和五七年三月五日総裁から四国総局長あての「職場規律の総点検及び是正について」の通達を受け、同月職場規律問題検討会を設置し、同年九月職場規律の第二次総点検を、昭和五八年三月第三次総点検をそれぞれ実施した。そして、同年四月四国総局管内における職場規律の改善を強力に推進するため職場規律改善推進委員会を設置し、松山電気支区においては鈴木治支区長が職場規律の回復に努力した。

このように職場規律の確立が喫緊の課題として全社を挙げて取り組んでいた時に、組合の指導的立場にある被控訴人がその上司に対し点呼の執行中に暴力を働いたものである。

右事情は本件処分の適否を判断するについても考慮されなければならない。

(2) 控訴人の施設内において組合旗を掲出することが控訴人の部内規程により禁止されていて許されないことは言うまでもない。

控訴人の施設に組合旗を掲出することが労働慣行として承認されていたようなことはなく、控訴人の四国総局ではこれまで国労の違法闘争が繰り返される都度国労に対しその中止を申し入れ、合わせて違法な組合活動に対する警告を行ってきたが、この中には組合旗の掲出も含まれており、これを認容したり、黙認してきたことはない。

組合旗の無断掲出が違法であること、そして、鈴木支区長がした組合旗の撤去行為が違法であることを考慮して、本件処分の適否ないし当否を判断すべきである。

(3) 被控訴人は控訴人が国労に対し申入れ又は警告してきたことを通じて、組合旗の掲出に控訴人の施設を利用するには許可を必要とし、許可のないものについては撤去を求められることを十分に承知していたはずであり、また、昭和五八年一月か二月に組合旗を掲出しようとして鈴木から控訴人の建物に勝手に組合旗を掲出してはいけないと注意を受けたこともあり、更に同年五月二日武井宏之分会長が鈴木に組合旗撤去の理由を問いただした際、被控訴人もこれに同席していて鈴木の回答に理解を示しており、それ以上に鈴木に対し組合旗撤去の理由を問いただす必要はなかった。

したがって、被控訴人が点呼の際鈴木に対し組合旗撤去の理由を執拗にただしたことは鈴木の業務を計画的に妨害し、職務を混乱させる意図をもってしたものであることが明らかであり、悪質である。

(4) 本件暴行の態様は、止めに入る者がいなければ継続していたと思われるもので、悪質であり、被控訴人が本件暴行で罰金刑を受けたことも軽視すべきではなく、また、本件処分の事前通知をした日の翌日である昭和五八年五月三一日以降、国労愛媛支部が中心となって暴行事件は当局のでっち上げであると主張し、はがき、電話による執拗な抗議行動を開始し、これが鈴木の宿舎にまで及んだため、鈴木は宿舎の電話番号を変更せざるをえなくなり、家族の受けた精神的苦痛も少なくない。したがって、被控訴人の謝罪の事実も有利な情状として重視すべきではない。

(5) 被控訴人はこれまでにも組合問題について上司を執拗に追及するところがあり、昭和五八年二月四国総局光山忠彦総務部長が松山駅舎屋上に掲出された国労松山運輸分会の組合旗を撤去するように命じたとき、翌朝松山駅ホームで組合員らを指揮して抗議のシュプレヒコール(唱和)を行い、光山部長の乗車した特急列車の窓ガラスを叩くなどし、また、本件組合旗の撤去問題について松山電気区長や同支区長(鈴木)に抗議するにあたっても脅迫的言辞を用いて職場の上司をないがしろにするなどの態度を執った。

(二)  被控訴人

(1) 労使対等の原則が支配する労働契約関係においては、懲戒処分についても裁量権の優越性を強調すべきではない。特に懲戒免職処分は勤労者に著しい不利益を与えるものであるから、懲戒処分に際し免職処分を選択することは慎重でなければならない。

本件暴行の発端は鈴木による組合旗の撤去にあり、控訴人において過去に組合旗がどのように掲出され、これに対しどのように対処されてきたかが重要であって、控訴人の当審主張(1)のような事情は的外れである。

(2) 本件は組合旗の掲出それ自体の適法・違法が直接の審判の対象となっているものではないが、右適否に関する控訴人の主張は争う。

控訴人の部内規程である労働関係事務基準規程は本来組合旗の掲出を承認する場合があるように規定されていない。組合旗の掲出は労働慣行に委ねられていたものである。そして、控訴人は組合に対し控訴人の施設内に組合旗を掲出することを正当な組合活動の一つとして明示又は黙示に承認していたものであり、これが労働慣行として確立されていた。

(3) 控訴人の当審主張(3)ないし(5)は争う。

三  証拠関係(略)

理由

一  当事者の地位について

請求原因(一)の事実はいずれも当事者間に争いがない。

二  本件処分について

請求原因(二)(1)の事実は当事者間に争いがない。

三  懲戒事由の存否について

1  控訴人の就業規則六六条に懲戒事由として「職務上の規律をみだす行為のあったとき」(一五号)、「著しく不都合な行為のあったとき」(一七号)が規定されていることは当事者間に争いがない。

2  被控訴人が鈴木支区長に暴行を加えるに至った経緯、暴行の態様、それによって生じた結果についての認定判断は、次に補正するほかは、原判決理由説示中の右関係部分(原判決一一枚目裏四行目から同一四枚目表末行目まで)と同じであるから、これを引用する。

(一)  原判決一一枚目裏一〇行目の「同鈴木治」の次に「(原・当審。ただし、後記措信しない部分を除く。)」を、同一一行目の「同三谷林」の次に「(ただし、後記措信しない部分を除く。)」を、同行目の「同光山忠彦」の次に「、同渡辺博幸(当審)」を、同末行目の「原告本人」の次に「(原・当審)」をそれぞれ加える。

(二)  同一二枚目表二・三行目の「第六九号証」を「第六九、第七三号証」に、同三・四行目の「中右認定に反する部分」を「中及び証人鈴木治(原・当審)、同三谷林の各証言中右認定に反する部分」に、同一〇行目の「職場規律推進委員会」を「職場規律改善推進委員会」にそれぞれ改め、同行目の「発足させ、」の次に「職場規律の改善に必要な措置を取ることとし、同年五月二日同委員会幹事会において無断掲出の組合旗に対する取組みを協議し、」を加える。

(三)  同一三枚目表二行目の「午後八時ころ」を「午後八時一〇分ころ」に改める。

3  右事実によると、被控訴人は勤務時間内である点呼執行中に上司に対し暴言を吐いたうえ暴行を加え、同人に傷害を負わせたものであるから、これは職務上の規律を乱すものであって、控訴人の就業規則六六条一五号所定の懲戒事由に該当する。

四  本件処分の効力について

1  日本国有鉄道法三一条一項及び同項一号の規定する業務上の規程である控訴人の就業規則(〈証拠略〉)によると、懲戒処分の種類は免職、停職、減給、戒告の四つとされている。このうち具体的にどの処分を選択するかは、懲戒権者たる控訴人の総裁の裁量的判断に一応委ねられていると解するのが相当である。しかしながら、免職処分については、他の懲戒処分と異なり、被処分者の職員としての身分を失わせるという重大な結果を生じさせるものであるから、その裁量の範囲も無制限ではなく、処分の対象となった行為の動機、態様、結果、当該職員の行為前後の態度及び処分歴等その他諸般の事情に照らし、免職処分が当該行為との対比において甚だしく均衡を失し、社会通念上合理性を欠くと考えられる場合には、右免職処分は裁量の範囲を逸脱した解雇権の濫用として無効となるものというべきである。

なお、右諸般の事情の中には、控訴人が主張する本件暴行時及び本件処分時における控訴人の置かれている立場も含めて考慮すべきことはいうまでもない。

2  そこで、本件処分が社会通念上合理性を欠いた処分であるか否かについて検討する。

(一)  本件暴行の発端が鈴木による分会組合旗の撤去とこれに関連する問答であったことは既に前記三2で説示したとおりである。そこで、右組合旗の掲出・撤去から右暴行に至った経緯等について検討する。

(1) 成立に争いのない(証拠略)、原・当審における被控訴人本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によると次の事実が認められ、当審証人渡辺博幸の証言中右認定に反する部分は前記採用の各証拠に照らし措信できず、他にこの認定を左右するに足りる証拠はない。

(ア) 控訴人の施設内においては、相当以前から国労の組合旗が闘争中控訴人の許可を得ることなく掲出されてきたが、控訴人がこれに対し組合旗の撤去を命じあるいは自ら撤去した例は昭和四六年のいわゆるマル生闘争終結時以降はなかった。

(イ) やがて控訴人の事業の再建が社会問題となり、運輸大臣は昭和五七年三月控訴人の総裁に対し職場規律の確立が重要であり、実態調査に基づき厳正な措置を講じる必要がある旨指示し、臨時行政調査会は同年七月第三次答申(基本答申)において、控訴人の緊急に取るべき措置として、職場規律の確立を図るため職場におけるやみ協定及び悪慣行を全面的に是正し、違法行為に対する厳正な処分等の人事管理の強化を図るべきことを提言し、同年九月の閣議では、控訴人の緊急に講ずべき対策として第一に職場規律の確立等が掲げられ、職場におけるやみ協定及び悪慣行について総点検等により実態を把握し、是正措置を講じること、職場の信賞必罰体制を確立し、人事管理の一層の強化を図ること等が指示され、また同時に、控訴人の経営は非常事態に立ち至っているとして、全職員が現況を強く認識して再建にまい進すべきであるとの政府声明が発せられた。

控訴人は昭和五七年三月全職場を対象に第一次総点検を実施し、いわゆるやみ休暇、やみ手当、時間内入浴、服装の整正、ビラ・看板等の撤去状況などを調査点検したが、右第一次総点検では組合旗は調査の対象とされておらず、その後の第二次総点検(昭和五七年九月)、第三次総点検(昭和五八年三月)においても、右総点検の期間中全国各地で国労の組合旗がしばしば掲出されていたのに、その撤去を巡って控訴人と国労との間で特別大きな問題が生じたことはなかった。

(ウ) 控訴人の四国総局でも、昭和五七年三月五日控訴人の総裁から四国総局長あてに「職場規律の総点検及び是正について」の通達がなされ、同月職場規律問題検討会が設置され、職場規律の総点検が行われたが、組合旗については松山駅構内においても国労松山電気区分会のほか同気動車区分会、同運輸分会、同情報区分会、同保線区分会等の組合旗が従来から闘争時等に掲出されてきたのに、何ら問題にされず、同年四月二〇日四国総局総務部長、労働課長から国労四国地本書記長、業務部長に手交された「是正改善すべき事項の主なもの」と題する書面でも「管理者の許可のないビラ、横断幕、看板等の撤去」という項目はあったが、組合旗の撤去については触れておらず、昭和五八年二月五日、四国総局総務部長が松山駅舎屋上に掲出されていた国労松山運輸分会の組合旗を撤去するように命じるまでは、当局からの具体的な撤去命令が出された例はなかった。

(エ) 鈴木は昭和五八年一月か二月ころ被控訴人に対し、同人が松山現業事務所一五号建物三階に組合旗を掲出しようとしているのを見て、同所に掲出してはいけないと注意したことがあり、被控訴人はこれを取り止めた。このことについて、鈴木は控訴人の建物に許可なく組合旗を掲出することが許されない旨警告したつもりでいたが、被控訴人は三階の場所が不適当であると指摘されたようにしか受け取らなかった。被控訴人はそれ以後右建物二階の階段通路に掲出された組合旗について撤去を命じられたこともなかった。

(オ) 控訴人の四国総局では昭和五八年二月二五日ころ管内の管理者あてに組合旗の撤去通告を指示したが、これが組合にどのように伝えられたのか明らかでなく、国労四国地方本部闘争委員長は同年三月八日各支部闘争委員長あてに組合闘争の一環として同月一四日から一七日まで組合旗を掲出することを指令しており、控訴人の四国総局長は同月一二日国労四国地方本部執行委員長あてに出した申入書で「国鉄の施設等へのビラ貼り等については違法な行為である」と警告したものの、組合旗の掲出について特記しておらず、したがって、組合旗は同月一四日から掲出され同月一七日組合の手によって撤去された。

(カ) 国労四国地方本部闘争委員長は同年三月三一日組合旗の掲出を指令し、同年四月一日に同月五日以降撤去の指令を出した後、同月二三日同年春闘後半の闘いとして同月二五日以降別途指示するまで組合旗を掲出するよう指令を出し、国労愛媛支部闘争委員長は同月二五日各分会長あてに右と同内容の指令を出した(なお、この組合旗闘争は五月一八日中止された。)。

(キ) 四国総局では同年四月職場規律改善推進委員会を発足させ、組合旗の撤去についても積極的に取り組むようになり、同年四月二八日ないし三〇日の高松地区の各駅で組合旗が当局の手によって撤去されたのに始まり同年五月二日には四国総局管内の各地で当局の手による組合旗の撤去がなされた。

(ク) 被控訴人は同年五月二日組合旗が当局によって撤去されたことを知り、松山電気支区長室に赴き、鈴木に対し「管理者は泥棒のようなまねをする。」「お前らを首にすることは簡単だ。」などと言って抗議したが、武井分会長が先に来ていて既に組合旗の返還を受けており、武井からそれ以上の追及は必要でないと言われて退出した。

被控訴人はこのとき鈴木から組合旗撤去の理由につき説明を受けたことはない。

(ケ) 被控訴人は同月四日出勤したとき、武井から前日組合旗が当局によって再度撤去されたことを聞き、これが点呼のとき鈴木と問答する契機となった。

(2) ところで、組合旗の掲出について、控訴人は無断掲出が控訴人の労働関係事務取扱基準規程により禁止されており、これに違反するものは撤去できると主張し、被控訴人は組合旗の掲出は正当な組合活動の一つとして労働慣行により控訴人に承認されていたと主張する。

そこで、右規程(〈証拠略〉)をみるに、第一六条で掲示板の設置について労働組合からの申出があった場合の許可条件を定め、第一七条二項で組合掲示板以外の場所に労働組合の掲示類を掲出してはならないと定め、同条三項でこれに違反する掲示類はすみやかに撤去し、又は組合掲示板の使用を停止すると定めており、他に掲示類の取扱いについての定めは見当たらない。これによると、その文言から判断する限り右規程は掲示板を利用した掲示類の取扱いを定めたもので、組合旗の掲出に関する取扱い基準を定めたものとは解されず、控訴人が右規程に基づいて組合旗掲出の許可不許可を判定し運用してきたものとは到底考えられない。したがって、右規程に基づく控訴人の前記主張はこれを認めることができない。

しかしながら、右規程の有無にかかわらず、一般に、労働組合又はその組合員が使用者の許諾を得ないで使用者の所有し管理する物的施設を利用して組合活動を行うことは、これらの者に対しその利用を許さないことが当該施設につき使用者が有する権利の濫用であると認められるような特段の事情がある場合を除いては、当該施設を管理利用する使用者の権限を侵し、企業秩序を乱すものであり、正当な組合活動に当たらないということができる(最高裁判所昭和五四年一〇月三〇日第三小法廷判決・民集三三巻六号六四七頁)のであるから、組合旗の掲出は一般的に禁止されており、右禁止を侵すものについては控訴人において自らこれを撤去できるものと解する余地がある。

しかし、組合旗は組合の団結の象徴としての性格があり、勤労者の団結権が憲法上保障されていることに照らすとき、組合旗の掲出は使用者からもそれ相応の丁重な取扱いを受けるべき性質のものであるから、組合旗掲出の態様及びこれに関する従来の労働慣行等をも考慮のうえ、右組合旗の掲出を控訴人において禁止し、更にこれに違反するものにつき自らその撤去ができるか否かについては慎重な検討を要するものとしなければならない。

前記認定の事実によると、組合旗の掲出が正当な組合活動の一つとして労働慣行により控訴人において承認されていたと言えるか否かはともかくとして、四国総局管内において少なくとも昭和五八年二月ころまでは組合旗の掲出が事実上黙認ないし放任されてきたことは紛れもない事実であるから、控訴人がなんらの制約なくして自由に右組合旗の撤去をなしうるものと解することは困難である。

(3) そうすると、控訴人が前記認定の経緯により鈴木をして分会組合旗を撤去させたことは極めて異例の措置であったと言うことができるのであるから、たとえ組合が組合旗の掲出につき承認の手続を経ていなかったとしても、この一事により控訴人が施設管理権に基づき組合旗の撤去を強行したことは少なくとも穏当を欠く措置であったものと解さざるをえない。

結局、被控訴人が控訴人による組合旗の撤去につき反発したことについては一義的にその当否を判断することはできず、また、前記認定の事実によると、控訴人主張のように被控訴人が控訴人の国労に対する申入れ又は警告を通じて掲出許可のない組合旗の撤去が求められていることを十分承知していたとか、昭和五八年一月か二月の鈴木の注意によって組合旗の掲出が許されないことを承知していたとか、同年五月二日の組合旗返還を求めた際に組合旗撤去の理由を聞かされて承知していたとか言える事情はなかったものと認められる。

そして、前記認定のとおり組合旗の掲出が組合の指令に基づいてなされてきた経緯に照らすと、国労愛媛支部の書記長であった被控訴人が組合旗を再度撤去されたことに反発し、鈴木に対し抗議の趣旨も込めて組合旗撤去の理由を問いただそうとしたことには、組合役員としてやむをえないところがあったとも言える。

したがって、被控訴人の非違行為の情状を判断するについては右のような事情を無視することはできず、被控訴人が組合旗の撤去について抗議する趣旨で発問したことは、その方法の相当性を別として一概に非難することはできない。

(4) もっとも、被控訴人の右質問は業務に関係のない組合活動についてのものであるから、本来点呼時間中になすべき類のものではないと一応は言いうるが、前記三2で認定した事実によると、被控訴人は鈴木の「何かございますか。」という問いに応じて右の質問をしたものであり、ことさら同人の点呼業務の進行をさえぎって質問したわけではなく、しかも、原審における証人鈴木治、同兵頭和昭の各証言及び被控訴人本人尋問の結果によると、当否は別として、点呼時間中職員が上司に対し組合活動等につき質問し、あるいは意見を述べることが従前からしばしば行われていたことであり、鈴木としても当日ある程度予測していたことが認められる。したがって、被控訴人が点呼時間中組合旗の撤去につき質問したからといって、それ自体が控訴人主張のように上司の点呼業務の妨害にあたるとまですることは相当でない。

そして、右のような被控訴人の質問に対し、鈴木が「総局、区の指示です。」という答えに終始し、何ら実質的な理由を示さなかったことは前記認定のとおりである。これは、当時同人がいわゆる末端管理職(電気支区長)の地位にあり、四国総局及び区長の指示に従わなければならなかったという立場にあったことを考慮しても、やや配慮を欠いた態度であったと言わざるをえない。

(5) したがって、以上のような経緯を前提にすると、被控訴人は、鈴木の右態度に憤慨し、本件暴行に及んだものと認められ、その動機においては被控訴人に有利に斟酌すべきものがある。

(二)  次に、本件暴行の態様は必ずしも悪質なものでなく、傷害の程度も比較的軽微であったと判断する。その理由は原判決理由説示中の右関係部分(原判決一八枚目裏六行目から同一九枚目表六行目まで)と同じであるから、これを引用する。

(三)  なお、被控訴人の本件暴行についてその情状となるべき点について検討する。

(1) 本件暴行につき被控訴人が刑事罰を受けたことは当事者間に争いがないが、本件に関する限り右事情をそれほど重視すべきものではないと判断する。その理由は原判決理由説示中の右関係部分(原判決一九枚目表七行目から同裏七行目まで)と同じ(ただし、同一九枚目表一〇行目の「甲第一一号証」を「甲第一一、第一二、第一五号証」に改める。)であるから、これを引用する。

(2) 成立に争いのない(証拠略)、原審における証人鈴木治の証言及び被控訴人本人尋問の結果によると、被控訴人は本件暴行のあった日の翌日及び翌々日鈴木方を訪れ、同人に対し暴行を加えたことを謝罪し、更に後日松山電気支区検査班詰所において同支区の職員の前でも同様に自己の行為につき謝罪していることが認められる。

もっとも、前記(証拠略)、当審証人鈴木治の証言及び弁論の全趣旨によると、被控訴人に本件処分の事前通知がなされた五月三一日以降、国労愛媛支部が中心となって暴行事件は当局のでっち上げであると主張し、電報、はがき、電話による執拗な抗議行動を開始し、それが鈴木宅にまで及んだため、鈴木は宿舎の電話番号を変更せざるをえないことになり、家族の者が受けた精神的苦痛も少くないことが認められる。

しかし、後者の事情は鈴木には気の毒であるが、これをもって被控訴人の謝罪の評価を減殺するのは相当でない。

(3) 成立に争いのない(証拠略)によると、被控訴人は昭和五七年と昭和五八年にいずれも国労が実施した闘争に参画し、業務の正常な運営を阻害したとして二度の戒告処分に処せられたことがあるものの、職場の規律をみだしたとして処分されたものでないことが認められる。

また、原審証人鈴木治、同兵頭和昭の各証言によると、被控訴人の平素の勤務態度に格別の問題はなく、職場における鈴木との関係もおおむね良好であったことが認められる。

もっとも、成立に争いのない(証拠略)、原審における証人光山忠彦の証言、被控訴人本人尋問の結果と弁論の全趣旨によると、被控訴人は昭和五八年二月四国総局光山総務部長が松山駅舎屋上に掲出された国労松山運輸分会の組合旗を撤去するように命じたとき、翌朝松山駅ホームで組合員らを指揮して抗議のシュプレヒコールを行い、光山部長の乗車した特急列車の窓ガラスを叩くなどしたことが認められ、また、前記認定の事実によると、被控訴人は本件組合旗の撤去問題につき昭和五八年五月二日夜鈴木に抗議するにあたり、「管理者は泥棒のようなまねをする。」「お前らを首にすることは簡単だ。」などの言辞を用いたことがある。

これによると被控訴人は組合活動に熱心のあまり不穏当な言動に走るところが見受けられるが、いわゆる前歴として評価すべきまでのものではない。

(四)  以上検討した本件暴行の動機、態様、結果、本件暴行前後の被控訴人の態度及び処分歴等に照らすと、被控訴人の控訴人職員としての身分を失わせる本件処分は、その対象となった行為との対比において甚だしく均衡を失し、社会通念上合理性を欠くものと言わざるをえない。

控訴人が公共輸送機関として人命を預かる立場にあったところから職場秩序の維持を肝要と考え、特に昭和五七年ころ以降においては社会的要請もあって職場規律の確立を喫緊の課題として取り組んでいた時期であっただけに、上司に対する暴行事件を軽視できないとしたことにそれなりの理解もできるが、その点を考慮に入れてもなお、右判断が左右されるものではない。

原・当審証人光山忠彦の証言によると、控訴人において本件以外にも上司に対する暴行・傷害を理由に懲戒免職処分にした事例があることが認められるが、右各事例の詳細な内容は不明である。

したがって、本件事例と比較しうる懲戒免職処分の適切事例も見当たらないので、他事例との比較において本件処分の正当性を根拠づけることはできない。

3  そうすると、本件処分は裁量権の範囲を逸脱したもので、解雇権を濫用したと言うべきであるから、その余の点について判断するまでもなく無効である。

五  賃金等請求について

1  被控訴人が本件処分当時控訴人から一か月平均二〇万六六〇〇円の賃金を毎月二〇日に受領していたことは当事者間に争いがない。

2  また、被控訴人が本件処分当時支給されていた基本給を基礎にしてその後の定期昇給(昇給が減ぜられる事由がない場合)、ベースアップ、扶養手当、通勤手当の増額分を被控訴人にそのまま適用した場合その額が別紙賃金等増額一覧表記載のとおりであることは当事者間に争いがない。

そして、被控訴人が昇給についての昇給欠格条項に該当するとの主張立証がないから、これがなかったものと推認される。

したがって、被控訴人の賃金は別紙賃金等増額一覧表に記載のとおり算出されるから、別紙賃金一覧表の賃金額欄に記載のとおりになる。

3  次に、昭和五八年度年末手当から昭和六三年度夏期手当までに控訴人がその職員に支払った各期末手当の支給率をそのまま被控訴人に適用した場合その額が別紙期末手当計算式一覧表に記載のとおりであり、各期末手当の支払日が別紙期末手当一覧表(A)の支払日欄に記載のとおりであることは当事者間に争いがない。

しかし、弁論の全趣旨によると昭和六一年度夏期手当から労使間において協定が締結され、日常の勤務成績に応じて五パーセントの増減ができるとされていることが認められ、支給率に変動のありうることが明らかである。

そうすると、被控訴人の右時期の期末手当は確定しないことになるが、少くとも基準となる支給率に基づいて算出した額から五パーセントを減じた額の期末手当を受領しうることが認められる。

したがって、被控訴人の期末手当は昭和六〇年度年度末手当までは別紙期末手当計算式一覧表に記載のとおり算出されるものとして別紙期末手当一覧表(A)の期末手当額欄に記載のとおりとし、昭和六一年夏期手当以降は別紙期末手当計算式一覧表に記載のとおり算出された額から五パーセントを減じた額としてこれを認める(この結果、別紙期末手当一覧表(B)の期末手当額欄に記載のとおりになる。)。

六  そうすると、被控訴人の本訴請求は雇用契約上の地位確認及び別紙賃金一覧表記載の番号1ないし4の賃金額欄記載の各賃金とこれに対する各支払日の翌日である当該月二一日から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金、昭和六二年四月以降毎月二〇日限り一か月当たり二四万三七〇〇円の賃金とこれに対する各支払日の翌日である当該月二一日から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金、別紙期末手当一覧表(B)記載の番号1ないし15の期末手当額欄記載の各期末手当とこれに対する同一覧表の支払日欄記載の各支払日の翌日から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の各支払を求める限度で正当として認容し、その余は失当として棄却すべきである。

七  よって、右結論に及ばない原判決は当審における請求拡張により一部不当となったので、本件附帯控訴に基づき原判決を右の限度で変更し、本件控訴は理由がないのでこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法九六条、九二条、八九条を、仮執行の宣言につき同法一九六条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 高田政彦 裁判官 孕石孟則 裁判官谷澤忠弘は転補につき署名捺印することができない。裁判長裁判官 高田政彦)

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